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おだのぶなが

織田信長

坂口 安吾

「季刊作品 第一号」創芸社、1948(昭和23)年8月10日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,950 字 · 36 页

青空文庫

人の肩につるさがって瓜を食いながら街を歩いたタワケ小僧の再現であった。

道の途中に、砦が落ち、守将の佐久間大学らが戦死した知らせがきた。道々砦から落ちてくる兵が加わり、総勢三千人ほどになった。今川軍の先鋒は大高城にはいって兵糧を入れつゝあり、義元は主力を田楽狭間にあつめて、勝ち祝の謡をうなっていた。

信長はそこを奇襲した。今川義元は味方がケンカをはじめて同志討ちをしているのかと思っているうち、もう織田方の侍が飛びかゝって首を斬り落されていたのである。

信長の戦争は、いつもこんな風であった。家来の用意のとゝのうのを待たず、身のまわりのたった十人ぐらいで出陣するのは、この戦争に限ったことではない。家来たちは慌てふためき、信長に有無を云わさずひきずり廻され、ふと気がつくと戦争がすみ、戦争に勝っている。

筋が立たず、不合理に思われ、それで呆気なく勝っているから、信長は勝敗は運だという、その運を家来たちはマグレ当り、偶然のギョウコウ、そう見ることしかできない。信長の偉さを合理的に理解することができないのだ。

信長にとっては、すべては組立てられていたのである。