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おだのぶなが

織田信長

坂口 安吾

「季刊作品 第一号」創芸社、1948(昭和23)年8月10日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,950 字 · 36 页

青空文庫

乗馬の心得で、虎の皮と豹の皮を継ぎまぜて造った半袴をはいていた。

この一行が信長の休憩にあてられた寺へはいると、道三はバカの正体見とゞけて、何くわぬ顔、自分方の寺へもどった。

ところが、道三も一パイくわされてしまったのだ。道三ばかりじゃなかった。信長の家来がキモをつぶした。

休憩所へはいると、すぐさま屏風をひきまわして、信長は立派な髪にゆい直し、いつ染めておいたか秘書官の太田牛一もしらない長袴をはき、これ又誰も知らないうちに拵えた小刀をさし、美事な殿様姿で現れたものだ。お供の面々、誰一人、今まで夢に見たこともない姿であった。

信長はスルスルとお堂へすすんだ。縁を上ると、さア、こうお出でなさいまし、と案内の侍臣が奥をさしたが、信長は知らぬ顔、目玉をむいた大僧どもの陳列然と居流れる前をスーと通りぬけて、縁側の柱にもたれてマヌケ面である。

信長がしばらく、柱にもたれていると、道三が屏風をおしのけて、出てきた。道三も知らんフリをしている。

侍臣が信長に歩みより、こちらが斎藤山城殿でござります、というと、柱にもたれた信長は、

「デアルカ」

と言った。

それから敷居の内へはいって、道三に挨拶をのべ、ともに座敷へ通って、盃を交し、湯づけをたべ、いと尋常に対面を終わり、又、あいましょうと云って別れた。