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おだのぶなが

織田信長

坂口 安吾

「季刊作品 第一号」創芸社、1948(昭和23)年8月10日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 17,950 字 · 36 页

青空文庫

生きるとは、全的なる遊びである。すべての苦心経営を、すべての勘考を、すべての魂を、イノチをかけた遊びである。あらゆる時間が、それだけである。

信長は悪魔であった。なぜなら、最後の哲理に完ペキに即した人であったから。

然し、この悪魔は、殆ど好色なところがなかった。さのみ珍味佳肴も欲せず、金殿玉楼の慾もなかった。モラルによって、そうなのではない。その必要を感じていなかったゞけのことだ。

老蝮は、悪逆無道であると共に、好色だった。彼は数名の美女と寝床でたわむれながら、侍臣をよんで天下の政務を執っていた。これもモラルのせいではない。その必要のせいである。悪魔にとっては、それだけだった。信長の謹厳も、老蝮の助平も、全然同じことにすぎなかった。

信長は、信玄のアトトリの勝頼に自分の養女をもらってもらって、しきりにゴキゲンをとりむすんでいた。戦争達者な信玄坊主と、好んで争うことはない。好んで不利をもとめることは、いらないことだ。信長はゴキゲンをとりむすぶぐらいは平チャラだった。

すると、信長は綸旨をもらい、その翌年は老蝮から降参だか友情だかわけのわからぬ内通をうけ、そして義昭の依頼をうけた。