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わなにかかったひと

罠に掛った人

甲賀 三郎

「探偵」駿南社、1931(昭和6)年5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,112 字 · 21 页

青空文庫

旨い隙を見て飛かかったとしても、老人ではあるが、頑丈そうな玉島には、友木は反って組み伏せられるかも知れない。何とかして兇器を手に入れて、寝入っている所とか、背後からとか、兎に角、不意をつかなければ成功しそうにないのだ。

友木は潜り戸や裏木戸に手をかけて見たが、ビクともしなかった。門を乗り越すには未だ時刻が早過ぎる。

友木は云い現わす事の出来ない焦燥と不安とを感じながら、玉島の家の前を往きつ戻りつした。時々通りかかる人影に追われては、通りの方に出た。通りを一廻りしては又家の前に来た。

夜は次第に更けて、寒さはいよいよ増して来た。が、忍び入るべき機会は少しも彼に与えられなかった。けれども彼の勇気は容易にひるまなかった。彼は執拗に目的の家の廻りを離れなかった。

何回目かに、通りの方から玉島の家のある薄暗い横丁に這入って来た時に、友木の足にポーンと当ったものがあった。見ると、それは小さい風呂敷包だった。友木は何の気なしに取り上げた。風呂敷の中は軽い紙束のような手触りのするものだった。

もしや、と思って友木はドキンとした。彼はよく金を拾う場面を空想したものだった。