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うつくしいむら

美しい村

堀 辰雄

序曲「大阪朝日新聞」(「山からの手紙」の表題で。)1933(昭和8)年6月25日、美しい村「改造」1933(昭和8)年10月号、夏「文藝春秋」1933(昭和8)年10月号、暗い道「週刊朝日 第25巻第13号」1934(昭和9)年3月18日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 42,946 字 · 84 页

青空文庫

暗い道

なっている原因にも気がつきだした。そうしてそれとほとんど一緒に、もうこんなにこの村には沢山の外国人がはいり込んでいるのかなあと思いながら、私はすこし呆気にとられたように、いましがた私の背後を通り過ぎて行ったばかりの、その最後の塵芥車をいつまでも見送っていた。……

暗い道

「どっちへ向いて行くんだか、私にはちっとも分らないわ」彼女はいくらか上ずったような声で言った。

「実は僕にも分らなくなっちゃったのさ……」私はそう返事をしながら、彼女の方を見やったが、その白い顔の輪廓がもうほとんど見分けられないくらいの暗さになりだしていた。実際私自身にもこんな風に私たちの歩いている山径の見当がちょっと付きかねていたのだけれど、私はわざとそれを冗談のように言い紛らわせていたのだった。

――その日、私が私の「美しい村」の物語の中に描いた、二人の老嬢たちのもと住まっていた、あの見棄てられた、古いヴィラの話を彼女にして聞かせると、それをしきりに見たがったので、私自身はもうそんなものは見たくもなかったのだけれど、その荒れ果てたヴェランダから夕暮れの眺めがいかにも美しかったのを思い出して、夕食後、ともかくもそのヴィラまで登って行ってみることにした。