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うつくしいむら

美しい村

堀 辰雄

序曲「大阪朝日新聞」(「山からの手紙」の表題で。)1933(昭和8)年6月25日、美しい村「改造」1933(昭和8)年10月号、夏「文藝春秋」1933(昭和8)年10月号、暗い道「週刊朝日 第25巻第13号」1934(昭和9)年3月18日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 42,946 字 · 84 页

青空文庫

どうやらそれが私の昔の女友達どもらしく見えたからだ。……私は急に、私のそばにいる彼女の腕をとって、向うから苦手の人が来るらしいので捕まると面倒くさいからと早口に言訣しながら、いま来たばかりの水車場の方へ引っ返していった。そうして再びさっきの小川の縁に並んで立ちながら、その人達がそのまま本通りの方から来るか、それとも宿屋の裏の坂を抜けてくるか、どっちから来るだろうと、両方の道へ注意を配っていた。……そしてそっちにばかり注意を奪われていたので、私たちは、私たちの背後の、いましがた其処から私たちの出てきたばかりの林の中から、数人のものが懐中電気を照らしながら、出てくるのには全然気がつかずにいた。突然私たちはその懐中電気のまぶしい光りを浴びせられた。私たちはびっくりしてその小川の縁を離れた。……しかし懐中電気を手にしていた男の方でも、そんなところに思いがけず私たちが突っ立っていたのに、面喰ったらしかったが、その一人が私だと気がつくと、

「××君じゃない?」と私の名前をためらいがちに言った。そう言われて、私が一層驚いて、まぶしそうに顔をしかめながら振り向いて見ると、それは私の学生時代からの友人であった。