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びみほうだん

美味放談

北大路 魯山人

「星岡」1935(昭和10)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,841 字 · 16 页

青空文庫

上京の頃

僕が初めて東京に出て来た年少時に、京橋のビアホールになにか祝いごとがあってね。ビールが半額なんだ。飲んでやろうと思って行ったが、まず洋食を食おうと思ってね。ところがその時は洋食のことはなにも分らん。ビフテキといっても、それが野菜だか肉だか飲物だか分らん。どうしようかと思って、そこで考えたね。隣のテーブルで命じたものの名前を覚えておいて、その品物が来るのを一生懸命我慢して待っておった。ところが持って来たものがもしかして、前に命じたものを持って来たんじゃないかしらなんて心配してね、用意周到なことだ。とにかくビフテキを注文したがもしかして変なものを持って来たらば逃げ出そうと思っていたら、隣のと同じものを持って来たので安心したよ。聞いてみたらこんどはフライだ。そこでこっちもフライを注文した。西洋料理の名前を二つ覚えたよ。なにしろ他人の注文した料理を見てから注文したんだからね。……その洋食を食った頃は京橋のカフェーなんど古風な物だったよ。新橋の芸妓を呼んでサービスさせたものでね。その頃「伊太利」とかいう洋食屋があって、イタリア風の「うどん」