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よしつねのむすめ
義経の女
山本 周五郎
「少女之友」実業之日本社、1943(昭和18)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,735 字 · 8 页
そのときが来たのである。河越太郎重頼は義経の舅にあたる、重頼の女が義経の妻になっていたのだ、千珠は義経の女である、舅が討たれたとすれば、女である千珠が無事である筈はない、良人の云うとおりで、まさしく心をきめなければならぬときだ。みぐるしいふるまいをしてはいけない、千珠はそう自分をたしなめながら、しずかに立って身舎へはいった。
今にもと思っていたが、なにごともなく日が経っていった。河越へやった者も、鎌倉へやった者も帰って来たけれど、太郎重頼の討たれたことが精しくわかっただけで、なんのためという理由はわからなかった、「たしかに伊予守どののゆかりに座したのだ」有綱もそう云うし、千珠もそれに違いないと思いながら、けれどもしやするとほかに理由があるのではないかという気持もして、いかにも落ちつかぬ日をおくっていた。十日ほどして、京から頼朝が帰って来た。日本総追捕使征夷大将軍としての晴れの帰国だった。有綱は駿河のくにまで迎えに出た。頼朝はきげんよく会い、ひきで物などあって、有綱はたいそうめんぼくをほどこした。それから供の中にいる筈の、兄の駿河守広綱に逢おうとすると、そこで思いがけぬことを知った。