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ほんやくのかち

翻訳の価値

宮本 百合子

「ゴロヴリョフ家の人々」にふれて

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,126 字 · 7 页

青空文庫

の出た前年日本では明治五年、福沢諭吉が「かたわ娘」という物語でおはぐろをつけたり眉を剃ったりする徳川時代からの女の因習を諷刺した年である。それとこれと、国民が所有する文学発達の層の比較ということも、深く考えられる。

今日の日本の社会は、おのずから過去七十余年の明治以来の推移に思いをひそめさせ、文学にも系譜的な小説があらわれて来ている。真の系譜がどのように社会的な立体的な把握をされなければならないかということについて「ゴロヴリョフ家の人々」は教える多くのものをもっている。

訳者の序の引用文に、この作家がその創作を政治的な問題に意識的に服従させ而も芸術的形象の完成を妨げなかったことをかかれているが、今日私たちの置かれている環境の現実はこういう点に関して周密な考察を必要としているのだと思う。文学作品の創られてゆく過程を引用の文章のように二元的に見ることが不完全であるということは、過去数年来の刻苦によって、既に明らかにされていはしないだろうか。

現実の起伏の詳細と変化とを世界歴史の進歩の方向において感じ、理解し、全的に描き出すことで、とりも直さず文学が次の世代にも生きる生命をもつのであると見るべきだと思う。