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ろうじんとこどくなむすめ

老人と孤独な娘

小山 清

「新潮 第六十二巻五号」新潮社、1965(昭和40)年5月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,236 字 · 5 页

青空文庫

しばらく老人は娘のことを思った。また、跛の娘のことを思った。

映画館を出てから、林の外れの道に、少し疲れて休んだ。老人は杖を引いて腰を下した。右半身がまだ痛いのであった。右腕が痛いし、外に出ると右の胸が神経痛のように痛いのであった。三時頃であった。

突然、跛の娘が側を通った。老人も娘も不思ず黙礼した。「どこか、病気なのですか?」と娘は心配そうに言った。「くたびれた。なんでも、ないんだ。」と老人は言った。娘は「おじいさんは、映画を見ましたね。」と言った。「うん。」と老人は頷いた。「わたしも見ました。」と娘は言った。映画館の中で娘は老人の姿を見た。「娘が可哀そうですね。とても可哀そうですね。」と娘は言った。「うん。」と老人は頷いた。娘はそばに腰かけた。娘は言った、「野鴨はわたしの田舎の山の鴨池で、野生の鴨がとてもいますわ。」老人は頷いた。娘は言った、「『野鴨』の娘は可哀そうですね。」「うん。」「わたしは跛なんです。赤ん坊の頃、脱臼になってしまいました。左足が少し縮んでいます。」「そうか。」と老人は頷いた。脱臼がなんのことか、分らなかった。娘は「おじいさんは、Q町五丁目でしょう。