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ろうぎしょう

老妓抄

岡本 かの子

「中央公論」1938(昭和13)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,601 字 · 31 页

青空文庫

老母が縁もゆかりもない人間を拾って来て、不服らしいところもあった。

みち子は柚木の膝の上へ無造作に腰をかけた。様式だけは完全な流眄をして

「どのくらい目方があるか量ってみてよ」

柚木は二三度膝を上げ下げしたが

「結婚適齢期にしちゃあ、情操のカンカンが足りないね」

「そんなことはなくってよ。学校で操行点はAだったわよ」

みち子は柚木のいう情操という言葉の意味をわざと違えて取ったのか、本当に取り違えたものか――

柚木は衣服の上から娘の体格を探って行った。それは栄養不良の子供が一人前の女の嬌態をする正体を発見したような、おかしみがあったので、彼はつい失笑した。

「ずいぶん失礼ね」

「どうせあなたは偉いのよ」みち子は怒って立上った。

「まあ、せいぜい運動でもして、おっかさん位な体格になるんだね」

みち子はそれ以後何故とも知らず、しきりに柚木に憎みを持った。

半年ほどの間、柚木の幸福感は続いた、しかし、それから先、彼は何となくぼんやりして来た。目的の発明が空想されているうちは、確に素晴らしく思ったが、実地に調べたり、研究する段になると、自分と同種の考案はすでにいくつも特許されていてたとえ自分の工夫の方がずっと進んでいるにしても、既許のものとの牴触を避けるため、かなり模様を変えねばならなくなった。