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せいにょにんぞう

聖女人像

豊島 与志雄

「群像」1947(昭和22)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,549 字 · 28 页

青空文庫

その、さらさらと走るペン先と、一枚ずつめくられてゆく原稿紙とを、私は不思議な気持ちで眺めたものだ。こちらが黙っていると、彼の方から話しかけて来た。私は彼を、精神分裂症ではないかと疑ったほどだ。

その彼が、晩年、というのはつまり死去の少し前、あまり人に逢いたがらなかった。人前では決して仕事をせず、仕事をしていない時でも訪客を嫌った。外出することも少くなった。或る時、非常な重大事でも打明けるような調子で私に言った。

「孤独を味いたくなったんだ。少し遅すぎるかも知れないがね。」

それからちょっと間を置いて、また言った。

「孤独の底に沈んでみたいんだ。」

深い絶望か或は高邁な理念か、どちらに彼が捉えられたかを、私は知らない。いや、そういうものに捉えられたのでも恐らくなかろう。――其後一年ほどして彼は急逝した。

その別所のことが、へんに気にかかってくる。私の孤独圏というのは、別所の所謂孤独とは異質のものかも知れない。精神の周囲と言ってもよし、精神の内部と言ってもよいが、そこの僅かな空間のことで、それは絶対に私一人だけのものであり、決して他人の窺※(「穴かんむり/兪」