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はだいろのつき

肌色の月

久生 十蘭

「婦人公論」中央公論社、1957(昭和32)年4~8月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 50,706 字 · 101 页

青空文庫

私の出来ることでしたら……」

そういうと、お辞儀をして、あたふたと帰りかけた。

「石倉さん……」

はあ、といって石倉が戻ってきた。

「あなたバンガローの鍵を預っていらっしゃるんだって?」

「鍵?」

「どれでもいいから、ひとつ開けておいてくださらないかしら」

「バンガローは三十ほどありますが、鍵のかかるのは一つもありません。空いてさえいれば、誰でも自由に入れるようになっているので……それで、どうなさろうというんですか」

「ゴタゴタするのはかなわないから、そっちへ移ろうと思うの」

石倉は怒った犬のような眼つきになった。

「気持はわかるが、そうなさらないほうが、お為でしょう」

「お為って、なんのこと?」

「御本宅でも、警察でも、あなたがここにいられることは知っているんですから」

「どうしてなの」

「私がいいました。隠してはおけないことだから……バンガローへ移ってみたって、ゴタゴタするのはおなじでしょう。遠くへ逃げるというのなら、話はべつですが」

「なにか意見がありそうね。伺うわ……あたしにどうしろというんです」

「あなたは、昨夜から、ずうっと大池さんといっしょにいらした……奥さまやご子息さまも、あなたの話を聞きたいところだろう……あなたにしても、それくらいのことをするのが、世間一般の義務ってもんじゃないですか……これから、深いところを