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はだいろのつき

肌色の月

久生 十蘭

「婦人公論」中央公論社、1957(昭和32)年4~8月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 50,706 字 · 101 页

青空文庫

ですか」

K・Uといえば自分の姓と名の頭文字だが、久美子がその女性であろうわけはなかった。

「それは誰かちがうひとでしょう。あたしは大池さんには、昨日お目にかかったばかりで」

「ああそうですか」

捜査一課ほもっともらしくうなずき、煙草の煙の間から眼を細めて久美子の顔をながめていたが、灰皿に煙草の火をにじりつけると、説得する調子になった。

「新聞でお読みになったろうと思うが、東洋銀行の浮貸しで、三億円ばかり回収不能になった……大池氏は潔癖なひとだったようで、失踪中にも焦げつきの補填をしようというので、いろいろと努力されたふうだった……K・Uという女性は、その辺の事情をよく知っていたらしいから、説明してもらえたらというのが、ねがいなんです……写真なんかもないからどんな顔だちのひとなのか、それさえわからない。当人が自発的に名乗り出るのを待つほか、われわれのほうには手がないわけで……あなたの不利になるようなことは、一言も言ってくれなくても結構です。失踪中の大池氏の経済活動の状態を、だいたいのところ、洩らしてくださるだけでいいので、あなた個人に迷惑のかかるようなことは、絶対にありません」