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はだいろのつき
肌色の月
久生 十蘭
「婦人公論」中央公論社、1957(昭和32)年4~8月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 50,706 字 · 101 页
「厄介なことになったよ」
と忌々しそうにつぶやいた。
畑中が詫びるようにいった。
「土、日は、どうもやむを得ないので」
「土、日は、言われなくともわかっているさ。だいたい、どれくらい入っているんだ」
「横浜の聖ヨセフ学院の百五十名、ジャンボリー連盟の二百名……いまのところ四百名たらずです……死体捜査の邪魔になるし、こっちの岸へやってこられると困るから、絶対にボートを貸さないように管理人に言っておきました」
「そうまですることはない。おれの言っているのはべつなことだ……それで、女はどうなった?」
畑中にかわって木村がこたえた。
「今日一日、安静にしておけば回復するだろうといっていました」
主任は火のついた煙草を指ではじき飛ばすと、むっつりとした顔で下草のうえにあぐらをかいた。
「そんな簡単なことだったのか。電話の報告じゃ、いまにも息をひきとりそうなことをいっていたが」
「引揚げたときは、ほとんど参りかけていたんですが、あまり水を飲んでいなかったので、心臓麻痺の一歩手前で助かりました」
「二分近く、水の中であばれていたんだって?……いったい、なんのつもりで、湖水に飛びこんだんだい?」