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はだいろのつき

肌色の月

久生 十蘭

「婦人公論」中央公論社、1957(昭和32)年4~8月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 50,706 字 · 101 页

青空文庫

「あの女のすることは、われわれにはわかりません……湖底に吸込孔があるとかないとかという口争いになって、そのうちに、いきなり飛びこんじゃった……一分以上経ってもあがってこないもんだから、大池の伜が心配して、空気ボンべを背負ってようすを見に行くと、いきなり水藻の中から出てきて、送気のゴム管を握って沈めにかけたというんです」

「妙な話だな。それを誰がいうんだ」

「大池の伜が……それで石倉という管理人が引分けに行ったが、あばれて手に負えないので、片羽絞めで落しておいて、やっとのことでひきあげたんだそうです」

主任はなにか考えてから、木村にたずねた。

「近くに、舟がいたか」

「私が……」

と畑中がこたえた。

「二百メートルほど離れたところで錨繩を曳いていました。女の飛びこむところは見ませんでしたが、女をひきあげる前後の状況はだいたい事実だったように思います」

「それで?」

「ずっと酸素吸入をしていましたが、今のところまだ意識不明です」

「病院へ送ったろうね」

「いえ、病院に持ちこむには、行路病者の手続きをしなくてはならないので、ロッジのガレージにおいてあります」

「あの女に死なれると、捜査のひっかかりがなくなるんだぜ。