轻松读懂日语经典作品
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はだいろのつき
肌色の月
久生 十蘭
「婦人公論」中央公論社、1957(昭和32)年4~8月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 50,706 字 · 101 页
鍵のかかるバンガローなんか一つもないのに、鍵を預っている男が吉田へ行っているから、バンガローは使えないだろうといったこと、部屋の中はうっとうしいくらいの陽気なのに、むやみに松薪をおしこんで、煖炉を燃やしつけたこと、大池のボートならロッジの近くの岸にあるべきはずなのに、一町も離れたところに繋いであったこと、なにかの方法で催眠剤を飲ませられたらしくて、翌朝まで酩酊状態が残っていたこと……心にかかっていたことを、ありったけ吐きだしたが、主任は笑うばかりで相手にもならなかった。
石倉があらわれるかと、ひそかに怖れていたが、いそがしいのか、石倉はあらわれず、伊東署の連絡係の若い巡査が心をこめて夕食の世話をしてくれた。
食慾はなかったが、無理をして、パン粥を一杯食べた。
「おいしかったわ」
「食が細いねえ。もうすこし、やったらどうだ」
「心臓のところが重っ苦しくて、食べられないのよ」
「そうか。無理をしちゃ悪いな」
しみじみとして、残っていられるなら、残っていてもらいたかったが、七時ごろ、おだいじにと言って帰って行った。
夜になると、対岸の草地でジャンボリーがはじまった。