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のうのなかのれいじん

脳の中の麗人

海野 十三

「日の出」1939(昭和14)年8月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,774 字 · 28 页

青空文庫

禁断の女

ひとりになった宮川は、あらためて戦慄の復習をやった。

なんというおそろしい男だろう。

一旦自分の脳を売っておきながら、その金で相場をやって、儲かればその金で、自分の脳を買い戻そうというのだった。

買い戻すといっても、彼の脳は、いまはちゃんと他人の脳室に入っているのである。いくら金を積んでも、いやだといったら、彼矢部は一体どうするつもりだろうか。

暴力か? あの権幕では、腕ずくで、持ってゆくかもしれない。暴力ならば、たとえ金がなくても実行ができるのだ。

(これはたいへんなことになった!)

と、宮川はぶるぶるとふるえた。

彼は、もう立ってもいてもいられなかった。そこで街をとおりかかるタクシーを呼びとめると、助けを乞うために、黒木博士の病院にとかけつけた。

「なあんだ、そのことですか。別に心配することはないですよ」

博士は、すこぶる落付いたものであった。

「ねえ、宮川さん。こういうことを考えたらいいではありませんか。たとえ矢部という男が百万の金を儂の前に積んだとしても、儂が手術を断れば、それでどうにも仕方がないではないですか」

「それは本当ですか、博士」