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のうのなかのれいじん

脳の中の麗人

海野 十三

「日の出」1939(昭和14)年8月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,774 字 · 28 页

青空文庫

手をはなしてくださらない」

宮川は、いつの間にか、女を両腕の中に抱いていたのだ。彼女に注意されて、びっくりして腕を解いた。なぜ彼は、そんなに昂奮したのか、彼自身にもふしぎなくらいだった。

「ねえ、美枝子さん。私はぜひあなたに会いたいと思って、矢部君に案内してもらったんですよ。どうです、これからどこかで御飯でもたべながら、ゆっくりお話をしようじゃありませんか」

宮川の唇から、すらすらとこんな言葉がでてきた。これもふしぎであった。

「まあ、はじめてお目にかかったのに、ずいぶん積極的ね。――でもいいわ、御馳走になりますわ。あなた、ほんとにすばらしい方ね」

そういって美枝子は、宮川のすんなりとした身体を背広のうえから撫でた。

待っていた怪女

その翌日のことだった。

宮川は、久しぶりで黒木博士を病院に訪ねたのだった。

「おお宮川さん。だんだん元気がつかれて、結構ですな」

宮川はそれには、挨拶もせずに、

「博士、今日は折いっておねがいに来ました。あの矢部君の残りの脳を買いとって、私のここに入れてください」

そういって彼は、自分の頭を指さした。

「それはまたどうしたのですか」