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のうのなかのれいじん
脳の中の麗人
海野 十三
「日の出」1939(昭和14)年8月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,774 字 · 28 页
「まあ、そんなところだろうよ」
看護婦長すら満足したほどの治癒程度で、宮川は退院した。
病院の門を出て、彼が一つの町角を曲ると、そこには洋装の佳人が待っていて、いきなり彼にとびついた。それは外ならぬ山崎美枝子だったのである。
「まあ、宮川さん。ずいぶん待ってたわよ」
「おお美枝子さん。こんどこそ僕は、君を失望させないよ」
二人は小鳥のようにたのしそうによりそいながら、向うの通りに消えた。
ところが、それから二三日たって、宮川は真白な救急車にはこばれて、黒木博士の病院へかえって来た。彼の顔には、白い布がかぶせてあった。博士は、その布をのけて宮川の後頭部をしらべたが、そこには描写のできないほどのひどい傷があった。
「警部さん、連れの女はどうしました」
「ああ、黒木博士、連れの女は、逃げてしまいました。行方を厳探中です」
「犯人の方はどうしましたか」
「ああ、八形八重という年増女ですか。これはその場で取押えて、一時本庁へつれてゆきました」
「精神病院から逃げだしたんだそうですね」
「そうです。ですが、この八形八重という女は、どうも正気らしいですぜ。この前の事件で、刑務所に入るのがいやで、装っていたんじゃないですかなあ。