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じがのあしかせ

自我の足かせ

宮本 百合子

「東京民報」1948(昭和23)年3月31日、4月1日号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,107 字 · 5 页

青空文庫

観を見ても、どんなにヨーロッパの近代的ヒューマニズムとちがっているかがわかる。日本のヒューマニズムは、ヒューマニズムの歴史的前進の核である社会と階級の問題をはじめから落していた。それゆえ、一九三八年ごろフランスでナチスの暴虐にたいして人間の理性をまもるために組織されたヒューマニスティックな人民戦線のたたかいも、日本に紹介される時には、大事な闘争の社会史的な核心をぬいて伝えられた。日本の天皇制は、帝国主義の段階にあってファシズムの性質をあらわしはじめていた。フランスの人々が、人民戦線によってめいめいの近代的自我を主張し、個人の尊厳をまもった努力にくらべれば、日本でいわれた人民戦線、行動主義の文学能動精神などというものは、実に社会的誠意をもっていなかった。

プロレタリア文学運動に加えられた野蛮な圧迫をおそれ、圧迫をさける一つの逃げ道としてばかりあつかわれた日本の当時の動きはもとより「自我」をまもるどころではなかった。

これらの事情をかえりみると一緒に、わたしたちは真面目に一つのことを反省しなければならないと思う。それは日本の封建性の圧迫をつねに感じていて、そのために感受性が異常になっている日本のインテリゲンチャの間には、一九二八年以来、奇妙な自己撞着があるということである。