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じさつをかうはなし

自殺を買う話

橋本 五郎

「探偵趣味」1927(昭和2)年5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,685 字 · 16 页

青空文庫

が)あたら華かな青春を、猫いらずや噴火口に散らす者もあるのだが、その○○○○○○○○○○○○頃は、文字通りに喰うや喰わずの、カンヴァスも無ければチューブも持たない、至って風雅な生活をしていたのだが、どうかしたはずみに、その喰うや喰わずの生活も出来なくなって終にまる一日、何も口にしないような日が続いた、そのある日のこと……。

2

風はないが、寒い日の暮方だった。

彼はさる荒れ寺の、半ば朽ち歪んだお堂の縁に腰を下して柱を背にうつつなく眠っていた彼自身を見出していた。

このお寺は都会のそれで、庭から直ぐに墓地が拡がり、墓地を低い破れ塀が廻らし、その彼方を夕暮の中に丘陵が連り、丘陵には電柱の頭が見え、そこにはすでに灯が点ぜられていた。丘陵を遠く、町の夜空が、ぼうっとうす明く照り淀んでいた。

彼の眼は涙を感じた。心は温い家庭を思った。乃至は華かな酒場を偲んだ。あかあかと燃えているストオブや、ゆるやかに香りをたてた紅茶の皿や、暖気に重くなったカーテンの緑色や、談笑や、煙草や、そして一銭の財布も持たぬ彼は、真実よるどころない現在を哀れんだのであった。

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○の一本も呑むことが出来た。