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しぜんのめぐみ
自然の恵み
中谷 宇吉郎
――少国民のための新しい雪の話――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,154 字 · 19 页
雪の結晶というと、誰でもすぐ顕微鏡写真を思い出す。そして顕微鏡で見るということが先に頭へ来るので、たいていの人は普通の肉眼ではとても見えないものと思い込んでいるらしい。というのは、雪国に住んで、冬の間中毎日のように雪を見ている人が、ほとんど誰も雪の結晶の形を自分の眼で見ていないのが、まことに不思議であるからである。札幌などで、雪の降っている中を歩いている時に、よく「この雪が皆美しい結晶をしているのですってね」というようなことをいう人がある。それで「ええ、こんなに美しい形をしていますよ」と外套の袖にくっついた雪を指して見せる。袖の上には小人の国の勲章のような美しい六花がのっている。そこで初めて「へえ、こんなに大きいものですか、なるほど六花になっていますなあ」と驚く人が多い。直径三ミリあれば、小豆粒くらいはあるのだから、肉眼で充分よくその形も模様もわかるのである。時には、小指の爪くらいの大きさの結晶もまじっている。
美しい写真をとったり、科学的に構造を調べたりするには、もちろん顕微鏡を使わねばならない。しかしその美しさをみとめ、自然の神秘に感嘆するだけならば、何も顕微鏡を必要とはしない。