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ほどう

舗道

宮本 百合子

「婦人之友」1932(昭和7)年1~4月号(著者検挙のため未完)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,745 字 · 70 页

青空文庫

どの部だって女事務員は一人か二人しかいないから、どうしても損な役割を押しつけられてしまうのだ――。

四時半になるのを待ちかねてドタドタみんなが帰ってしまった。埃っぽい、机のつまった室内を照して天井の電燈がついた。

ミサ子は、洗面所へ行った。ふんだんに水をつかってゆっくり手を洗ったり、髪をかきあげたりしたら、少し気分がさっぱりした。居のこりときまったら、いそいだってつまらなかった。××○○会社は四時半から後の残業は七時以後からでなければ割増しがつかなかった。従って、ちょいちょい居残りさせられても大抵のときはタダで、使われる者の損になるばかりだ。

自動車の警笛。メガホーンで何か叫んでいるぼやけた人間の声。丸の内のアスファルト道路から撥ねかえる夕方の騒音が、人気ない室へつたわって来る。

ミサ子は左手を握って暫く右の肩をたたいてから、再びタイプライタアをうちはじめた。

給仕の牧田が茶碗をあつめにやって来た。

「おや、いたんですか!」

「……あっちに誰かのこってる?」

「柳さんがいますヨ」

給仕が出て行って暫く経つと、キチンとしまっていないドアを少しあけて誰かが覗いた。