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ほどう
舗道
宮本 百合子
「婦人之友」1932(昭和7)年1~4月号(著者検挙のため未完)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,745 字 · 70 页
ミサ子が女学校時分ここを通る毎に感じたような、自信ありげな、燦々光るような雰囲気は、この頃の丸の内のどこの隅にもない。ぶらぶらと歩いている連中も気むずかしげに巨大なビルディングの下で、小さくごみっぽく見える。
東京駅の正面車寄のわきの槇の植込みの前で三四人もう頭の薄くなった連中が日に向って並んで、ニヤニヤしながら仲間におとなしく素人写真を撮られていた。
十一
そろそろ時間になるので、ミサ子が衝立のかげで仕事着のスナップをかけているところへ、
「ちょいと」
廊下かられい子が手招きをした。
「なアに?」
「化粧室へいらっしゃいよ、はる子さんから手紙が来たんですよ」
思わず足を早めて行って見ると、廊下からは見えない一方の隅の鏡の前へ、柳をはじめしづ子、サワ子そのほか二三人がかたまって凝っとしている。
れい子が真面目な小声で、
「大井田さん来てよ、見せたげて下さい」
と云った。黙ってしづ子が手にもっていた藤色のレターペーパーをミサ子の方へ出した。
鵞堂流にくずした細いペン字が紙を埋めている。ミサ子は、書き出しのありふれた時候の挨拶のところはいい加減にしておいて、「私の今度の病気につきましては、本当にみなさまの心からの御親切なお慰めの言葉をいただきまして」