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ほどう
舗道
宮本 百合子
「婦人之友」1932(昭和7)年1~4月号(著者検挙のため未完)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 34,745 字 · 70 页
柳は考えぶかい黒眼が一層黒く輝くような表情で、
「はる子さんのお金集めはいつ頃すむかしら」
と独言のように云った。
「さあ……もう一週間ぐらいのうちにはすむわね」
「沖本の穴銭がぶつぶつ云い始めたらしいのよ、少しぐらいまわり切らなくても、崩されないうちにそっちは一応切りあげて、これを手がかりに演劇サークルみたいなものをこしらえたらどうかと思うんだけど」
「いいわ! 会社であれだけにみんなの気が揃ったことってはじめてなんだから、これっきりにするのは何だか本当に惜しいわ」
柳が坂田に向って、
「××○○会社の女事務員はお上品だから、どんなに食堂がひどくても、食べ物のことから騒ぐなんてことは出来ないんですよ」
と鷹揚に笑った。坂田は、
「ふむ」と云ったぎり、別に皮肉な顔もせず、また笑いもしない。
ふだん何だか落着ないサラリーマンばかり見ているミサ子には坂田のその様子が好意をよび起した。柳たちはざっと二時間ばかりいて帰りかけた。が梯子の下り口で、
「ちょっと」
柳が後からついて来るミサ子の体をかるく押し戻して、小さい封筒に入れたものを握らした。
「これ読んで――あと焼いちまって! いい?」