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まいひめ

舞姫

森 鴎外

「國民之友第六拾九號」民友社、1890(明治23)年1月3日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,190 字 · 33 页

青空文庫

伯の汝を見まほしとのたもうに疾く来よ。汝が名誉を恢復するもこの時にあるべきぞ。心のみ急がれて用事をのみいいやるとなり。読みおわりて茫然たる面もちを見て、エリスいう。「故郷よりの文なりや。悪しき便りにてはよも」彼は例の新聞社の報酬に関する書状と思いしならん。「否、心になかけそ。おん身も名を知る相沢が、大臣とともにここに来てわれを呼ぶなり。急ぐといえば今よりこそ」

かわゆき独り子を出だしやる母もかくは心を用いじ。大臣にまみえもやせんと思えばならん、エリスは病をつとめて起ち、上襦袢もきわめて白きを撰び、丁寧にしまいおきし「ゲエロック」という二列ぼたんの服を出して着せ、襟飾りさえ余がために手ずから結びつ。

「これにて見苦しとは誰れもえ言わじ。わが鏡に向きて見たまえ。なにゆえにかく不興なる面もちを見せたもうか。われも諸共に行かまほしきを」少し容をあらためて。「否、かく衣をあらためたもうを見れば、なんとなくわが豊太郎の君とは見えず」また少し考えて。「よしや富貴になりたもう日はありとも、われをば見棄てたまわじ。わが病は母の宣うごとくならずとも」

「なに、富貴」余は微笑しつ。