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まいひめ
舞姫
「國民之友第六拾九號」民友社、1890(明治23)年1月3日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,190 字 · 33 页
次の朝目ざめし時は、なお独りあとに残りしことを夢にはあらずやと思いぬ。起きいでし時の心細さ、かかる思いをば、生計に苦しみて、きょうの日の食なかりし折りにもせざりき。これ彼が第一の書のあらましなり。
またほど経てのふみはすこぶる思いせまりて書きたるごとくなりき。文をば否という字にて起したり。否、君を思う心の深き底をば今ぞ知りぬる。君は故里に頼もしき族なしとのたまえば、この地に善き世渡りのたつきあらば、留まりたまわぬことやはある。またわが愛もてつなぎ留めではやまじ。それもかなわで東に還りたまわんとならば、親とともに往かんは易けれど、かほどに多き路用をいずくよりか得ん。いかなる業をなしてもこの地に留まりて、君が世に出でたまわん日をこそ待ためと常には思いしが、しばしの旅とて立ち出でたまいしよりこの二十日ばかり、別離の思いは日にけに茂りゆくのみ。袂を分かつはただ一瞬の苦艱なりと思いしは迷いなりけり。わが身の常ならぬがようやくにしるくなれる、それさえあるに、よしやいかなることありとも、われをばゆめな棄てたまいそ。母とはいたく争いぬ。されどわが身の過ぎし頃には似で思い定めたるを見て心折れぬ。