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ぶま

舞馬

牧 逸馬

「新青年」1927(昭和2)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,843 字 · 16 页

青空文庫

「困るなあ、困るなあ」

「なら、なぜ困るようなことをしたんだ?」

「何を? 何だと? なぜ困るようなことをした? どこを押せばそんな音が――この――」

「およしよ、もすさん、そんなに飲むの」

「いいじゃねえか。おらあ今夜飲んで飲んで――」

「何だい、そんな顔してあたしを白眼んでさ。どうしようっての。あたしを殺す気なの?」

「ふん、だ!」

「あたしは殺されてもいいけれど、おなかの子はお前んじゃないからね。親方んだからね」

「知ってますよ。はいはい、わかってますよ」

「もすさん、もっとこっちへお寄り」

「赤えかい、顔、おれの」

「色男! もっとこっちへお寄りってば」

「嫌だ――こうかね」

「もすさん、ふふふ、お前とんだ子供だねえ」

「知らねえよおらあ、そんなこと」

「いいじゃないか」

「親方は?」

「知らねえよおらあ、そんなこと。はははは」

「何とか言ってらあ――」

茂助はてれてこう言った時、植木屋だけにちょっと洒落た柴折戸をあけて、売物の植木が植わっているなかを、家のほうへ歩いてくる下駄の跫音がした。特徴のある、引きずるような歩調が、峰吉の帰ってきたことを知らせていた。

「あ! 親方だよ」