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はなとしょうじょ
花と少女
小川 未明
「赤い鳥」1924(大正13)年5月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 3,667 字 · 8 页
ある日のこと、さち子は、町へ使いにまいりました。そして、用をすまして、帰りがけに、ふと草花屋の前を通りかけて、思わず立ち止まりました。
ガラス戸の内をのぞきますと、赤い花や、青い花や、白い花が、みごとに、いまを盛りと咲き乱れていたからです。
まだ、春にもならなかったので、外には、寒い風が、しきりに吹いていました。しかし草花屋の温室には、スチームが通っているので、ちょうど五、六月ごろの雨のかかったように、しずくがぽたりぽたりとガラス戸の面を伝わって、滴っているのでした。
これらの花は、いずれも、もとは熱帯地方からきたので、こんな寒いときには、咲かないものばかりでした。太陽が、もっと近く、そして、風がやわらかになり、暖かくならなければ、圃には咲かないのでした。
さち子は、扉を開けて、その草花屋の内へはいりました。すると、ヒヤシンスや、リリーや、アネモネや、その他のいろいろな草花から発する香気がとけ合って、どんなにいい香水の匂いもそれにはおよばないほどの薫りが、急に、顔や体を襲ったのでした。
彼女は、しばらく、ぼうっとして、酔い心地になってしまいました。