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はなのたより

花のたより

宮本 百合子

「社会評論」1935(昭和10)年5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,279 字 · 12 页

青空文庫

無限の語られざる訴えを、私は心に銘じて今日も忘れ得ないのである。

東郷元帥というひとが、日本の資本主義の発展のために、欠くべからざるものであった過去の戦争において、巨大な功績をのこした人であり、人格的に卓越した将であったことは、近頃種々の刊行物にあらわれている日露戦争の思い出話のうちにも十分に窺える。智謀にも長け、情に篤く、大胆な決断力をも蔵していたであろうが、例えばバルチック艦隊全滅の勝利にしろ戦争は独り角力でない以上、対手かたの条件との相対的な関係というものが大きい作用をしている。

あの時分のロシアは、ヨーロッパの眠れる熊と呼ばれた。眠っている、然し吼えて立ち上ったらどのような力を振うかもしれぬというのが、広大な国土の潜勢力に対する列強の予想であった。

それに対して日本は、今日と全く違った目安でヨーロッパ諸国からは見られていたのであったから、イギリスの力を勘定に入れてもこの取組は、世界の注目の的となるのは当然であったろう。

ロシアの艦隊が、その実質にはツァーの政府の腐敗を反映して、どんなものであったかということは、ソヴェトの海洋文学の作者ノヴィコフ・プリボーイの近作「ツシマ」