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はなふぶき
花ふぶき
豊島 与志雄
「風雪」1948(昭和23)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,409 字 · 20 页
嘉代さんはおれを土間の隅っこに引張って言った。
「もう病院なんか行かないから、あの子を探して来て下さい。」
おれにはのみこめないのだ。
「あの子がいやがるのを、お花見に行くんだと言って、着物を着替えさしたんです。お宮の方ですよ。きっと。連れてきて下さい。」
おれが出かけようとすると、嘉代さんは突然泣きだしておれの腕をつかまえた。――大それた話をおれは聞いた。古賀さんは、大量の砂糖を隠匿してるらしい。時価一千万円近い量だともいう。その一部を、赤木の二階に預って貰いたいのだ。料飲店だから却って人目につかないと、苦肉の策だ。ただ困ったことに、白痴の千代がいる。正気の者なら口止めは出来るが、白痴の口止めは不可能に近い。そこで、暫く彼女を病院に入れることに、赤木と相談が出来た。ところが、古賀さんの現物の方に、現状では摘発される危険が迫ってきた。事情を聞いて嘉代さんも、承諾するともしないともつかない状態に追いこまれたらしい。固より、莫大な報酬がついてるのだ。それよりも更に、彼女はあまりに善良なのだ。大体そんなことらしい。
嘉代さんは泣いていた。
おれは気持が引っくり返った。