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はなこのちんじゅつ
花子の陳述
豊島 与志雄
「別冊文芸春秋」1952(昭和27)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,726 字 · 22 页
美津子さんも初めは大して気にしませんでしたが、重圧は次第に増してきました。そして遂には、原稿も書けなくなりそうだし、読書も出来なくなりそうだし、全く癈人同様になる外はないように思われました。
それになお、その電波は特殊なもので、こちらの微細な反応を、そっくり先方へ送り返すのでした。レーダーの極度に精緻なものだとも言えるようでした。こちらで思ってること、考えてること、夢に見たことまで、そっくり先方に分ってしまうのでした。
そういう電波が或ることを、美津子さんは知りませんでしたが、天気のよい或る日、道を歩いておりますと、誰かひそひそと、その電波のことを囁いて通りすぎました。そんなことが数回ありました。中には、あなたは狙われているから用心なさいと、注意してくれる者もありました。
そういうことで、次第に分ってきたのですが、美津子さんは特別な実験に使われてるのでした。どこかの放送局から、その特殊な電波を美津子さんに向けて放射し、美津子さんのあらゆる反応を記録に取ってるのでした。なぜ自分一人が狙われるのか、その理由は分りませんでしたが、然し、その実験が成功すれば、きっと、まだ多くの人が狙われるに違いありませんでした。