轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
はなび
花火
「文芸」1942(昭和17)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,233 字 · 29 页
どんと床を蹴って、「節子だな? 裏切りやがって、ちくしょうめ!」
恥ずかしさが極点に達すると勝治はいつも狂ったみたいに怒るのである。怒られる相手は、きまって節子だ。風の如くアトリエを飛び出し、ちくしょうめ! ちくしょうめ! を連発しながら節子を捜し廻り、茶の間で見つけて滅茶苦茶にぶん殴った。
「ごめんなさい、兄さん、ごめん。」節子が告げ口したのではない。父がひとりで、いつのまにやら調べあげていたのだ。
「馬鹿にしていやあがる。ちくしょうめ!」引きずり廻して蹴たおして、自分もめそめそ泣き出して、「馬鹿にするな! 馬鹿にするな! 兄さんは、な、こう見えたって、人から奢られた事なんかただの一度だってねえんだ。」意外な自慢を口走った。ひとに遊興費を支払わせたことが一度も無いというのが、この男の生涯に於ける唯一の必死のプライドだったとは、あわれな話であった。
松やは解雇せられた。勝治の立場は、いよいよ、まずいものになった。勝治は、ほとんど家にいつかなかった。二晩も三晩も、家に帰らない事は、珍らしくなかった。麻雀賭博で、二度も警察に留置せられた。喧嘩して、衣服を血だらけにして帰宅する事も時々あった。