轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

かしょく

花燭

太宰 治

1939(昭和14)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,501 字 · 38 页

青空文庫

あやうく踏みとどまり、冷汗三斗の思いでこそこそ店内に逃げ込んだ。ひどいほこりであった。六、七脚の椅子も、三つのテエブルも、みんな白くほこりをかぶっていた。かれは躊躇せず、入口にちかい隅の椅子に腰をおろした。いつも隅は、男爵に居心地がよかった。そこで、ずいぶん待たされた。客はひとりもはいって来なかった。はじめのうちは、或いは役者などがはいって来ないとも限らぬ、とずいぶん緊張していたのであるが、あまりの閑散に男爵も呆れ、やがて緊張の疲れが出て来て、ぐったりなってしまった。牛乳を三杯のんで、約束の午後二時はとっくに過ぎ、四時ちかくなって、その飲食店の硝子戸が夕日に薄赤く染まりかけて来たころ、がらがらがらとあの恐ろしい大音響がして、一個の男が、弾丸のように飛んで来た。

「や。しっけい、しっけい。煙草あるかい?」

男爵は、にこにこ笑って立ちあがり、ポケットから煙草を二つ差し出し、

「僕も、やっと今しがた来たばかりで、どうも、おそくなって。」と変なあやまりかたをした。

「ま、いいさ。」相手の男は、気軽にゆるした。「僕もね、きょうから生田組の撮影がはじまっているので、てんてこ舞いさ。