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わかあゆのしおやき
若鮎の塩焼き
北大路 魯山人
「星岡」1935(昭和10)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 891 字 · 2 页
新緑の味覚は、若あゆの塩焼きからといってもよい。関西方面ではともかく、東京で活あゆの料理が自由に食べられるようになったのは、そう古いことではない。
しかも、ほんとうに天然の若あゆを使っているうちが東京広しといえども、果たして幾軒あるであろうか。あゆはまだまだ喧伝させてよいであろう。
今のあゆは江州のもので六月になると丹波のあゆが出る。江州は野洲川の上流、および愛知川の上流のもので、丹波は和知川のものがもっともよい。
天然産のあゆとはちょっと見ればすぐわかる。形からいえば天然のものは細く長く、養殖のものは太く短い。色は天然産のものは黄金色を豊かに持ち、殊に眼の下一、二分のところに黄色い線がくっきりと表われる。養殖のものは一体に青味が強い。その他なんといっても天然産のものは二、三寸のものにして、すでに、海から十何里急流を登って来ているものであるから、鰭の発達がちがって大きい。そして背鰭の先が黒く、尾鰭の先端に赤みが認められる。急流の中を苦労して泳ぎながら、岩に生えている苔を食うので、頭はしまって小さいが鼻端が発達している。これに反し養殖のあゆはなんといっても池の中でいわしやさなぎの餌を与えられて急激に育つため、鰭が発達せず、腹部が張っていたずらに太っている。