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ちゃわんのゆ
茶わんの湯
寺田 寅彦
「赤い鳥」1922(大正11)年5月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 3,964 字 · 8 页
た。その心になるものは通例、顕微鏡でも見えないほどの、非常に細かい塵のようなものです、空気中にはそれが自然にたくさん浮遊しているのです。空中に浮かんでいた雲が消えてしまった跡には、今言った塵のようなものばかりが残っていて、飛行機などで横からすかして見ると、ちょうど煙が広がっているように見えるそうです。
茶わんから上がる湯げをよく見ると、湯が熱いかぬるいかが、おおよそわかります。締め切った室で、人の動き回らないときだとことによくわかります。熱い湯ですと湯げの温度が高くて、周囲の空気に比べてよけいに軽いために、どんどん盛んに立ちのぼります。反対に湯がぬるいと勢いが弱いわけです。湯の温度を計る寒暖計があるなら、いろいろ自分でためしてみるとおもしろいでしょう。もちろんこれは、まわりの空気の温度によっても違いますが、おおよその見当はわかるだろうと思います。
次に湯げが上がるときにはいろいろの渦ができます。これがまたよく見ているとなかなかおもしろいものです。線香の煙でもなんでも、煙の出るところからいくらかの高さまではまっすぐに上りますが、それ以上は煙がゆらゆらして、いくつもの渦になり、それがだんだんに広がり入り乱れて、しまいに見えなくなってしまいます。