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こうやのよびごえ
荒野の呼び声
山本 政喜
02 解説
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,368 字 · 25 页
ジャックはその冬の間にユーコン河のいくつもの支流に沿つて金鉱をさがし、ヘンダースン川で砂金に掘りあてて大いに喜んだが、それは砂金ではなくて雲母であることが判明して、ジャックの夢は破れた。そして彼は探金を断念した。
春になつてドースンの町に入り、酒場で探金者たちの長い身の上話や経験談に耳をかたむけ、賭博宿で博奕打ちの生態を観察し、金鉱発見のずつと前からいる毛皮猟師たちや古顔の探金者たちにこの地方の古事来歴をたずねた。そしてジャックは自然と人間をあらためて観察すると共に、再び「ユーコン河上で私は自己を発見した」のであつた。
六月に故郷へ帰つた時には一文の金もなく、金を得んとするゲイムには完全に負けたのであるが、自分では意識しなかつたにせよ、後年の頭脳商品の生産のための豊富な材料を身につけていたのである。
養父ジョン・ロンドンが既に死んでいたので、再びジャックは一家族の扶養を引受けねばならなかつたが、彼は食うための仕事は殆どかえりみずに物語を書くことに専念した。初めは中々反響がなく、苦しい生活をつづけたが、やがて「奥山道の男へ」、「白い沈黙」などが活字になり、二十三歳の七月には短篇小説と随筆が五つの雑誌に発表されて、いよいよ本格的な作家になる緒についた。