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こうやのよびごえ
荒野の呼び声
山本 政喜
02 解説
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,368 字 · 25 页
はからずも「荒野の呼び声」は批評家ばかりでなく一般の読者から歓迎されて年々に増刷をかさね、アメリカ国内で今日までに六百五十万部を売つたといわれている。イギリス、ドイツ、ことにソヴィエトで出版された部数は莫大なものである。一冊の書物でこれほどの売れゆきを見せた書物はバイブル以外にはあまりないと思われる。
この物語はもちろん一つの動物文学なのではあるが、大抵の動物文学が安易な寓話に陥りがちであり、さもなくば動物を人間から切り離して英雄化しているものが多いのに「荒野の呼び声」はファブルやシートンに近いリアリズムをもつて動物の世界を描き、しかも人間の社会生活と個人的性格に密接に関聯させた、ユニークな動物文学である。動物をも人間をも進化論の立場から見、殊に人間の個人的社会的生活は、自分の生活経験から得た社会主義的観点から見ている。随つて寓話でもなく、単なる教訓でもない。人生批判が全篇ににじみ出ている。それが本書を動物文学の逸品以上のものとしているのである。
そのような名作であることが認められたのはずつと後のことであつて、本人は勿論そういう自信をもつていたわけではなかつた。