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かつしかみやげ
荷風随筆集(上)
永井 荷風
永井荷風『荷風随筆集(上)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:葛飾土産、鐘の声、銀座、里の今昔、寺じまの記、伝通院、夏の町、日和下駄、深川の散歩、放水路、水のながれ、向嶋、向島、元八まん、霊廟。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 133,224 字 · 269 页
この一本道は近年つくられたものらしく、敷きつめられた砂利がまだ踏みならされていない処もある。右側は目のとどくかぎり平かな砂地で、その端れは堤防に限られている。左手はとびとびに人家のつづいている中に、不動院という門構の寺や、医者の家、土蔵づくりの雑貨店なども交っているが、その間の路地を覗くと、見るも哀れな裏長屋が、向きも方角もなく入り乱れてぼろぼろの亜鉛屋根を並べている。普請中の貸家も見える。道の上には長屋の子供が五、六人ずつ群をなして遊んでいる。空車を曳いた馬がいかにも疲れたらしく、鬣を垂れ、馬方の背に額を押しつけながら歩いて行く。職人らしい男が二、三輛ずつ自転車をつらね高声に話しながら走り過る……。
道は忽ち静になって人通りは絶え、霜枯れの雑草と枯蘆とに蔽われた空地の中に進入って、更に縦横に分れている。ところどころに泥水のたまった養魚池らしいものが見え、その岸に沿うた畦道に、夫婦らしい男と女とが糸車を廻して綱をよっている。その響が虻のうなるように際立って耳につくばかり、あたりは寂として枯蘆のそよぐ音も聞えないのは、日も漸く傾いて、ひとしきり風の鎮る時刻になったせいであろう。