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かつしかみやげ
荷風随筆集(上)
永井 荷風
永井荷風『荷風随筆集(上)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:葛飾土産、鐘の声、銀座、里の今昔、寺じまの記、伝通院、夏の町、日和下駄、深川の散歩、放水路、水のながれ、向嶋、向島、元八まん、霊廟。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 133,224 字 · 269 页
いつぞや(二十三、四の頃であった)柳橋の裏路地の二階に真夏の日盛りを過した事があった。その時分知っていたこの家の女を誘って何処か凉しい処へ遊びに行くつもりで立寄ったのであるが、窓外の物干台へ照付ける日の光の眩さに辟易して、とにかく夕風の立つまでとそのまま引止められてしまったのだ。物干には音羽屋格子や水玉や麻の葉つなぎなど、昔からなる流行の浴衣が新形と相交って幾枚となく川風に飜っている。其処から窓の方へ下る踏板の上には花の萎れた朝顔や石菖やその他の植木鉢が、硝子の金魚鉢と共に置かれてある。八畳ほどの座敷はすっかり渋紙が敷いてあって、押入のない一方の壁には立派な箪笥が順序よく引手のカンを并べ、路地の方へ向いた表の窓際には四、五台の化粧鏡が据えられてあった。折々吹く風がバタリと窓の簾を動すと、その間から狭い路地を隔てて向側の家の同じような二階の櫺子窓が見える。
鏡台の数だけ女も四、五人ほど、いずれも浴衣に細帯したままごろごろ寝転んでいた。暑い暑いといいながら二人三人と猫の子のようにくッつき合って、一人でおとなしく黙っているものに戯いかける。揚句の果に誰かが「髪へ触っちゃ厭だっていうのに。