轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しょうたく

荷風随筆集(下)〔全2冊〕

永井 荷風

永井荷風『荷風随筆集(下)〔全2冊〕』。同一底本的分册已合并为一书。收入:妾宅、十九の秋、十六、七のころ、十日の菊、雪の日。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,633 字 · 74 页

青空文庫

に前身をそらして、櫛の背を歯に銜え、両手を高く、長襦袢の袖口はこの時下へと滑ってその二の腕の奥にもし入黒子あらば見えもやすると思われるまで、両肱を菱の字なりに張出して後の髱を直し、さてまた最後には宛ら糸瓜の取手でも摘むがように、二本の指先で前髪の束ね目を軽く持ち上げ、片手の櫛で前髪のふくらみを生際の下から上へと迅速に掻き上げる。髱留めの一、二本はいつも口に銜えているものの、女はこの長々しい熱心な手芸の間、黙ってぼんやり男を退屈さして置くものでは決してない。またの逢瀬の約束やら、これから外の座敷へ行く辛さやら、とにかく寸鉄人を殺すべき片言隻語は、かえって自在に有力に、この忙しい手芸の間に乱発されやすいのである。先生は芝居の桟敷にいる最中といえども、女が折々思出したように顔を斜めに浮かして、丁度仏画の人物の如く綺麗にそろえた指の平で絶えず鬢の形を気にする有様をも見逃さない。さればいよいよ湯上りの両肌脱ぎ、家が潰れようが地面が裂けようが、われ関せず焉という有様、身も魂も打込んで鏡に向う姿に至っては、先生は全くこれこそ、日本の女の最も女らしい形容を示す時であると思うのである。