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くさもみじ

荷風随筆集(下)

永井 荷風

永井荷風『荷風随筆集(下)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:草紅葉、西瓜、梅雨晴、正宗谷崎両氏の批評に答う、裸体談義。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,512 字 · 63 页

青空文庫

唖々子が『通鑑綱目』を持出した頃、翰もまたその家から折々書物を持出した。しかし翰の持出したものは、唖々子の持出した『通鑑』や『名所図会』、またわたしの持出した『群書類従』、『史記評林』、山陽の『外史』『政記』のたぐいとは異って、皆珍書であったそうである。先哲諸家の手写した抄本の中には容易に得がたいものもあったとやら。後に聞けば島田家では蔵書の紛失に心づいてから市中の書肆へ手を廻し絶えず買戻しをしていたというはなしである。

森先生の渋江抽斎の伝に、その子優善が持出した蔵書の一部が後年島田篁村翁の書庫に収められていた事が記されてある。もし翰が持出した珍書の中にむかし弘前医官渋江氏旧蔵のものが交っていたなら、世の中の事は都て廻り持であると言わなければならない。

明治四十一年わたしは海外より還って再び島田を見た時、島田は既に『古文旧書考』四巻の著者として、支那日本両国の学界に重ぜられていた。一日島田はかつて爾汝の友であった唖々子とわたしとを新橋の一旗亭に招き、俳人にして集書家なる洒竹大野氏をわれわれに紹介した。その時島田と大野氏とは北品川に住んでいる渋江氏が子孫の家には、なお珍書の存している事を語り、日を期してわたしにも同行を勧めた。