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に
荷
金 史良
「佐賀高等学校文科乙類卒業記念誌」1936(昭和11)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,179 字 · 3 页
「日本てとこさ、豊作ちゅうですな!」それから、歴とした小作農でもある様に、ぶつくさ愚痴をこぼした。「チェーギ堪らねえだ、籾一斤五銭でやがらあ」
又或日の如きは、高潮した興奮の中で、すっかりせき込むのだ。……羽二重の見捨品を日本内地の工場から直接取り寄せて、大儲けをする者が居る。日本へ渡ったら、何とか取り計って呉れぬか。佐賀の居所は何処だ。一筆走らして貰い度い、等と。然し次の瞬間、尹さんは先の仰山な用件はけろりと忘れたものか、
「学生さん」と急に話題を変え、えへらえへらひょうきんに笑い出すのである。それはべらぼうな吐言の予告でもある。そして、彼はむきになって、村長と駐在所長とどちらが位の高いものだろうかと頭をひねった。私はつい苦笑すると、彼は益々顔面に深い皺を刻んで、それ見ろ至極難題で困ったろうとでも云うみたいに、胡麻塩の蓬髪をくさくさ掻き立てたのだ。
――秋の学期が始まり、佐賀に再び帰ってから間もないことである。郷里の母の手紙は、苛性曹達を嚥んだ彼の死を告げてきた。あの莫大な夢想と陶酔と自尊心の荷が、とうとう始末に逐えなくなったのかと、私は異様なショックに打たれたのだ。