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ヒューネラル・マーチ

葬送行進曲

野村 胡堂

「文芸倶楽部」1931(昭和6)年4月増刊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,494 字 · 25 页

青空文庫

ロボットの笑い

「そんな馬鹿な事が、そんな馬鹿な事が――」

道子の顔を魅入られたように見詰めて居た讃之助は、二足三足よろめくと、卓の角に片手を支えて、急に戦闘的な調子になりました。

「これほど申上げてもお解りにならなければ――貴方は卑怯です」

「卑怯では無いが、そんな事は断じて信じられない」

「信じられない筈はありません、貴方の前に立って居るのは、貴方の元の妻で、死んだ隆の母、十年前にお別れした勢子です」

「そんな事があるものか、顔が違う、顔がすっかり違う」

「私の顔は日本とアメリカの整形外科の名医が、手習草紙のようにして造り変えてしまったのです。昔の人の考えた、一時的の生優しい変装では承知が出来なかったのです」

「いや、嘘だ嘘だ、勢子は死んだ筈だ」

「そうです仰しゃる通り死んだ筈でした。併し誰も死体を見た人もなく、葬式をしてくれた人もありません」

「あ、あ、俺は気が違いそうだ」

讃之助は到頭打ちのめされたように、長椅子の上に半身を投げ掛けてしまいました。

ロボットの笑い

「何も彼もお話し致しましょう」

暫らく讃之助の様子を見て居た勢子――山北道子と名乗った不思議な女――は、同じ長椅子の上へ並んで掛けて、打って変って静かな調子で斯う始めました。