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じょうはつざら

蒸発皿

寺田 寅彦

「中央公論」1933(昭和8)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,912 字 · 18 页

青空文庫

これは二つの猫の位置のわずかな差のために生ずる些細な音や光の刺激の差でも説明されるかもしれないが、しかしまた猫の「自由意志」にも支配されると考えられよう。その自由意志が秋毫も宇宙線に影響されないとは保証できないような気がする。

以上は言わばたわいもない春宵の空想に過ぎないのであるが、しかし、ともかくもわれわれが金城鉄壁と頼みにしている頭蓋骨を日常不断に貫通する弾丸があって、しかもほんの近ごろまではだれ一人夢にもそれを知らずにいたというだけは確かな事実なのである。しかもその弾丸の本性はまだだれにもわからないのである。

科学はやはり不思議を殺すものでなくて、不思議を生み出すものである。

(昭和八年六月、中央公論)