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あおじろいつき

蒼白い月

徳田 秋声

「サンエス」1920(大正9)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,440 字 · 19 页

青空文庫

彼は眉目形の美しい男だという評判を、私は東京で時々耳にしていた。雪江は深い愛着を彼にもっていた。

私はこの海辺の町についての桂三郎の説明を聞きつつも、六甲おろしの寒い夜風を幾分気にしながら歩いていた。

「いいえ、ここはまだ山手というほどではありません」桂三郎はのっしりのっしりした持前の口調で私の問いに答えた。

「これからあなた、山手まではずいぶん距離があります」

広い寂しい道路へ私たちは出ていた。松原を切り拓いた立派な道路であった。

「立派な道路ですな」

「それああなた、道路はもう、町を形づくるに何よりも大切な問題ですがな」彼はちょっと嵩にかかるような口調で応えた。

「もっともこの砂礫じゃ、作物はだめだからね」

「いいえ、作物もようできますぜ。これからあんた先へ行くと、畑地がたくさんありますがな」

「この辺の土地はなかなか高いだろう」

「なかなか高いです」

道路の側の崖のうえに、黝ずんだ松で押し包んだような新築の家がいたるところに、ちらほら見えた。塀や門構えは、関西特有の瀟洒なものばかりであった。

「こちらへ行ってみましょう」桂三郎は暗い松原蔭の道へと入っていった。