轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

たでくうむし

蓼喰う虫

谷崎 潤一郎

「大阪毎日新聞 夕刊」1928(昭和3)年12月3日~1929(昭和4)6月17日<br>「東京日日新聞 夕刊」1928(昭和3)年12月3日~1929(昭和4)6月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 110,066 字 · 216 页

青空文庫

女の子のない家庭ではあり、彼女自身はそんなものに今では大した愛着もないのであるから、そう昔風なしきたりを固守するまでもないのだけれど、実を云うと、京都が近くなったために毎年父親が節句になるとその人形をなつかしがって、わざわざ見にやって来るのである。現に去年も一昨年もそうであったから、今年も多分忘れてはいないであろう。それを思うと、物置きの奥から一年間の埃のたまった幾つもの箱を引きずり出す面倒は忍ぶとしても、又この間の弁天座の時のような窮屈な場面が想像せられて気が重くなって来るのであった。どうかして今年は飾らないで済ませる法はないかしらん? 夫に相談して見ようかしらん? 一体あの雛を自分はこの家を出る時に再び持って行ったものかどうであろう? 残して置かれたら夫は迷惑するのではなかろうか?………

今になって急にそんなことが気にかかり出したと云うのは、多分今年の桃の節句にはもうこの家にいないであろうとぼんやり思っていたからなのだが、それがこうして寝室の中に籠っていてさえそぞろに春が感ぜられる暖かい陽気になってしまった。美佐子は仰向きに枕へつむりを載せたまま、暫く欄間に映っている明るい日かげへ眼をやっていた。