轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
あざみ
薊
山本 周五郎
「小説新潮」新潮社、1959(昭和34)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,800 字 · 32 页
「ゆきを、ゆきを」と彼は呼んだ、「眼をさませ、またうなされているぞ」
呻き声は止った。彼は屏風をまわっていった。すると、暗くしてある行燈の光りで、妻の夜具から誰かのぬけ出るのが見えた。それはつるという若い小間使で、寝衣のままであり、夜具からぬけ出るとき、乱れた裾から白い太腿があらわになった。
「どうしたんだ」と銕太郎が云った。
「胃が痛みまして」と夜具の中からゆきをが答えた、「いままでつるに押えていてもらいましたの」
銕太郎は小間使を見た。つるは坐ったまま深くうなだれ、片手でしきりに裾前を合わせていた。つるは十六歳になるが、躯つきはまだ少女らしいまるみに包まれ、口のききようも幾らか舌足らずで、知恵がおくれているのではないか、と思われるくらいだった。いま深くうなだれている頸筋から、肩へかけてのなだらかな柔らかい肉付は、かつて見たことのないほど女らしく感じられた。銕太郎は妻を見、つるを見た。灯を暗くし、屏風で夜具を囲った部屋の中は、二人の女性のからだが放つ、重たくこもったような匂いが満ちていて、彼は殆んど圧倒された。
「薬はのんだのか」と彼は妻に訊いた、「いつから痛みだしたんだ」