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あしかり

蘆刈

谷崎 潤一郎

「改造」改造社、1932(昭和7)年11月号、12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 39,413 字 · 78 页

青空文庫

父のこのおもわくは巧くあたりましてお遊さんは見合いとか打ち合わせとかのたびごとに出て参りました。小曾部の家には母親がおりませなんだし、そこへ持ってきてお遊さんがひまな体でござりましたからおしずさんは月のうち半分ぐらいは粥川の方へとまりに行っているというようなぐあいでどっちの家の娘だか分らないようにしておりましたので自然お遊さんの出る幕が多かったのでござりますがそれが父にはねがってもない仕合わせだったのでござります。父はもともと目的がそこにあったのでござりますからなるべく話を引っぱっておくようにしまして二度も三度も見合いをして半年ばかりぐずぐずにしておきましたのでそんなことからお遊さんも叔母のところへ足しげく来るようになりました。そのあいだには父とも話をするようなことがござりましてだんだん父というものがわかってまいったのでござります。するとある日のことお遊さんは父にむかって、あなたはお静がおきらいですかと尋ねるのでござりました。父がきらいではありませんといいましたらそれならどうぞ貰ってやって下さいましといってしきりに妹との縁組みをすすめるのでござりましたが叔母に向ってはもっとはっきりと自分はきょうだいじゅうであの児といちばん仲好くしているからどうかあの児を芹橋さんのような人と添わしてやりたい、